翻訳に挑戦するよ

 

せっかくブログをやるのだし、正教について知りたい人に何か良い読み物を提供できないかなと考え、私が洗礼を受ける前、啓蒙者時代にお世話になった本を訳してみたいと思います。

いい本だから訳したいのはもちろん、翻訳することで私の中の日本正教会の用語と意味を一致させたいという目的があります。

私は、ロシア正教会で洗礼を受けたので、頭の中にある正教に関するワードが、お祈りの言葉を含めほとんどがロシア語(正確には教会スラヴ語)です。日本で正教会に通い始めて思ったのは、亜使徒聖ニコライ(日本に初めて正教を伝えた人)の訳した明治時代の文章が現代人には難解すぎること。いやいや、待って、早速だけど亜使徒って??「使徒と等しい」という意味だそうですが、恥ずかしながら私は初見で意味を理解することができませんでした。勝手にアジアまで伝道しにきた人だと思っていた時期もありました。調べないとわからない用語だらけなのが日本正教の難しいところです。もう正直別の言語です。逆に言えば難しい漢字や古語ばかりでかっこいいですけどね。

怠け者の私は、今でさえ調べるようになりましたが、知らない単語もなんとなく理解したつもりになって放置していました。これは、日本語に限ったことではなく、英語だってロシア語だって同じです。そういった自分の悪いところを克服する意味でも、翻訳に挑戦してみたいと思います。

 

さて、早速ですが、これらか翻訳する本の紹介をしたいと思います。

タイトルは「神の法(The law of God/ Закон Божий)」といいます。1957年に、セラフィム・スロボツコイ(Seraphim Slobodckoy/ Серафим Слободской)というロシア人長司祭が、亡命先のアメリカ、つまり正教文化のないアメリカで暮らすこととなった正教徒たちのために、正教に関する正しい知識をまとめた教科書的著作です。ソ連崩壊後の1990年台に入ると、ロシア本国でも出版され、大ベストセラーとなりました。今では、神学校への進学を目指す受験生たちの必須参考書です。

まずは、少し著者の紹介をしましょう。

長司祭セラフィム・スロボツコイ(1912-1971)

セラフィムは、1912年、帝政ロシアの片田舎、ペンザ町チェレンツォフカ村の聖職者の家に生まれました。正教の教えの元で育ち、やがて青年になると人生を神への奉仕に捧げたいと願うようになります。しかし、1917年の十月革命が起きた数年後、無神論的な社会主義思想に反する正教への弾圧が強まり、多くの聖職者が逮捕され、処刑されました。セラフィムの父も例外なく、ソ連政府に捕らえられ、収容所で命を落とします。

セラフィムは学校を卒業後、モスクワに渡ると絵画芸術を学び、最終的には室内美術家の職を得ます。しかし、第二次世界大戦が始まると、セラフィムは前線へ送られ、ナチス政権の元で捕虜となり強制労働のためにドイツへ送られました。強制労働の中、セラフィムは幸いにも死を逃れます。彼の絵の才能に驚いた看守が、強制労働から彼を救い出し、別の収容所へ送ると、褒美としてセラフィムは日曜日に教会へ行くことを許されたのです。

多大な犠牲を出しながらも、ソ連ナチスドイツに対し勝利を収めます。しかし、セラフィムが祖国へ戻ることはありませんでした。ソ連に戻ったとしても、捕虜とはいえナチス政権によって比較的寛容に扱われていた、弾圧されし反ソビエトの息子として扱われることがわかっていたからです。セラフィムミュンヘンにて妻(帝政ロシア末期の著名な正教研究者の娘)を得て、1951年、ドイツの在外ロシア正教会で司祭に叙聖されます。

※在外ロシア正教会とは、ロシア革命時の1921年に置かれた教会組織で、共産主義政権の影響を受けやすいロシア正教会モスクワ総主教庁を離れ活動していました。本部はセルビアのカルロヴツィ、ウィーン、ミュンヘンを経て現在はニューヨークにあります。ソ連崩壊後、モスクワ総主教庁と和解し、庇護下に入りました。

さて、ミュンヘンでしばらく奉仕した後、セラフィムアメリカに亡命します。ニューヨーク州でいくつかの教会建築に携わり、ときどきイコン画を教えて過ごしました。亡命先の地でセラフィムは、亡命者たちの正教知識のレベルの低さに気づきます。現地で手に入る正教に関する参考書が少なかったので当然のことでした。そこでセラフィムは、教区の正教学校のために、教科書の執筆をはじめました。教科書には、基本的な神学概念、重要な祈祷文、旧約・新約聖書の物語の要約と解説、キリスト者の道徳姿勢、教会での祈祷や秘蹟について盛り込まれました。1957年に「神の法」を書き終えると、その功績を讃え1964年に長司祭(名誉司祭)に昇叙されました。晩年は心臓病に苦しみ、1971年にニューヨークで地上での生涯を終えました。

 

参考文献:

azbyka.ru

 

翻訳はロシア語から訳していこうと思います。

一冊に収まる本とはいえ分厚い本なので、無理ない程度に、最初からというよりは、私が個人的に重要だと思うところから訳していきたいと思います。また、一語一句訳すことよりも、日本語で読んですんなり入ってくる文体を目指して訳していくので、意訳が入る部分をあるかと思います。自分で確実なニュアンスを確認したいという方は、記事毎に翻訳箇所のリンクを貼っておくので、ぜひチェックしてみてください!

また、著作は英語でも読めるので、英語に自信のある人はこちらから読んでみてください。Google Booksでは、途中まで無料で読めます。

 

www.google.co.jp

 

また、ロシア語が読める方は、このサイトがとてもおすすめなので、一応リンクを貼っておきます。正教について知りたければ、たいていここに書いてあります。

azbyka.ru

 

毎週金曜日を目処に、少しずつ翻訳記事を出していきますので、よければ、金曜18時にブログをチェックしてみてくださいね!